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【2023.9.19】著者が語る「さらば、男性政治」の」読み方 ご報告

2023919日(火)に「オンライン読書会 著者が語る『さらば、男性政治』(岩波新書)の読み方」を開催いたしました。モデレーターを務めていただいた櫻井彩乃さんからそのレポートを寄せていただきました。

はじめに、「さらば、男性政治」(岩波新書,2023)のご著者である三浦まり上智大学法学部教授から、執筆に込められた思いをお話しいただきました。

著者 三浦まりさんからのメッセージ

【この本を執筆した理由】

多くの取材や講演での質問は「女性政治家はなぜ少ないのか」「少ないことの問題は何か」「女性議員が増えるメリットは何か」どうしたら増えるのか」という4点であり、これらの質問にまとめて答えつつ、多くの人が活用できるデータや知見を共有するべく、本書を執筆した。

【「男性政治」という表現に込められた思い】

男性が権力を持っているとの意味で当初「男権政治」としたが、編集部から「今の感覚だと、難しく、古めかしいのではないか」とのアドバイスもあり「男性政治」というタイトルに落ち着いた。基本的に男性だけで物事を決めており、たまに女性も入るが、男性と対等なメンバーとしては扱われない政治の場。副大臣・大臣政務官54人に女性が一人もいない第2次岸田内閣はまさに「The・男性政治」である。権力を男性が占有していることが問題の本質であり、これを打ち破らない限り、女性は増えず、増えたとしても意味のある変革には繋がらない。焦点を、「女性の問題」ではなく、「男性政治の問題」へとスライドさせるために、このタイトルを選んだ。

【本で強調したかったこと】

女性議員数を増やすことは「通過点」であり、その先に私たちが求める政治を明確にしなければ、 例え女性リーダーが少し増えたとしても、バックラッシュに遭い、ジェンダー平等は進まないということである。

質疑応答 三浦まり&櫻井彩乃

モデレーター 櫻井彩乃  企業では役員が男性のみであったり、女性の管理職比率が低い点が、問題視されるようになってきていると感じます。これは株主などのステークホルダーからのプレッシャーが影響していると感じるのですが、同様の流れが政治分野では起こらないのでしょうか。また、政権交代のタイミングで女性議員の割合が増えることが多いと著書にございましたが、そもそも日本では「政権交代」があまり起きていないのでしょうか。

著者 三浦まり  ありがとうございます。2つの問いは同じ答えで繋がっていて、有権者が政治を諦めてしまっていることが大きいです。投票率がとても低くて、 政治に参加して自分の生活が良くなる、将来が明るくなる、そういった感覚を持ってる人がとても少ないのです。ステークホルダーなど、企業で株主に当たる存在は、有権者、主権者ですから、主権者が政治にプレッシャーをかけると、必ず政治は変わります。政治というのは生活に直結していて、自分の地域・国や、あるいは自分自身や近しい人が幸せに生きていくためには政治に関わらないと大変なんだ、関わった方がより良い未来が手に入れられる、という風に、なるべく多くの人に実感してもらいたいと思っています。

そしてもう1つは、今日は全て話しきれないのですけれど、やはり制度的に、一旦選挙で勝った人がものすごく有利になる仕組みが多すぎることがあります。世襲議員が日本ではものすごく多いですが、それは勝つための仕組みを作れば、勝ち続けられるからです。 国によっては、多選禁止が決められていたり、世襲はありえないという強い世論があったり、あるいは予備選挙があるなど、現職だからといって必ずしも再選されるとは限らない仕組みがありますが、日本の政治制度は参入障壁が大変高い一方で、一旦当選して、地盤を固めると、権力の座に長くいられるようになっている。新陳代謝が全然無いのです。

これは、制度が悪いのです。制度を変えればもっと風通しが良く、権力者が交代するのですが、今権力を持っている人は今の制度を好みますから、なかなか変わらない。なので、やはり世論が、「こんなやり方おかしいんだ!」って、みんなで怒らないと変わらないですね。怒れば変わる。でも、怒る人が少ない。だから、みんな怒りましょう。それが、変わるポイントです。

モデレーター 櫻井彩乃  ありがとうございます。なにか、怒りかたの、「こういうのがいいよ」という方法のようなものはありますか? 

著者 三浦まり  誰に対してどのように怒るかってありますよね。よく「フェミニストは怒ってばっかりで怖い」という偏見もあるじゃないですか。ここに今日いらっしゃる人は、基本的に怒ってると思うんですよ。「なぜこんなにも(政治の場に)女性が少ないんだ!」って。だけど、そういう風に考えていない人に対してストレートに怒りを出すと、「なんか怖い」という反応や、共感が得られない。社会運動を嫌う雰囲気などと相まって、なかなか広がらないというジレンマもあると思います。

 政権に対しては怒らないといけないから怒るべきですが、でも同時に楽しい、政治って面白いと思うことも必要です。それを伝えるために、「政治って、面白い」という本を書きました。怒る時もあれば、楽しい時は楽しい。両方ありますよという風に、伝えていくのがいいかなと思います。

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参加された方からの感想、ご意見(アンケートより。一部抜粋)

コメントが活発で、みなさんのコメントを見ながら共感して頷きながら参加しました。貴重な機会を無料で提供してくださりありがとうございました。

質問に対する三浦さんの応答がとても勉強になりました。タイトル「読書会」から受けるイメージと違いましたが、参加してよかったです。ありがとうございました。

・三浦先生のお話しはとても分かりやすかったです。30代男性ですが、いつも社会や組織や古い価値観の家族に怒っていましたが、ジェンダー問題で久しぶりに、明るい未来に希望の持てるお話しをお聞きできました。これからもいろんな場面で男性中心主義と戦っていこうと思えました。

・三浦先生の明解なご説明に共感することが多くありました。また、とても活き活きと楽しそうに話されることが印象的で、元気をいただきました。三浦先生のお話が20分弱で終わり、どんな進め方をされるのだろうかと思っていましたが、モデレーターの櫻井さんの進行も素晴らしく、また、参加者の皆さんからも次々に意見が出て、有意義な会でした。オンライン参加者の発言には、女性が今も置かれている様々な事例について紹介がありました。私自身は「女性だから」という理由で不自由を感じたりした経験がなく、「出過ぎた杭は打たれない」状態で突っ走っているので、多くの方が感じておられる女性の立場を再認識することにもなりました(あるいは、自分の鈍感さを恥じなくてはいけないのかもしれません)。若い世代へのアプローチ方法の話は、高齢化に悩む所属協会のあり方を考えるヒントにもなりました。

・三浦先生の話はわかりやすく課題が明確になった。櫻井さんの司会もよかった!

・女性らしさの縛りが家父長制から現在まで続いていることを実感しました。社会通念に流されないために日々性格な情報や学びを取り入れたいと思いました。

・直接、作者の声を聞くことができてよかった。地方で女性議員を増やすのは、まだまだ大変だが、できることを見つけて活動していきたい。

アンケートへのご協力、ありがとうございました。

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